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2011.01.03 (Mon)

【つるかめ物語 健全篇02】

■落とし穴の予感 キョコ視点

More・・・



「なんでアンタがここにいるのよっ」
 視線の先には、悠然とソファに腰掛けるショータローがいた。カインドードリンコ本社の会議室にて、波乱の事態の幕開けである。
「なんでって、仕事に決まってるだろーが。俺がこんなとこにピクニックにでも来てるように見えるかよ?」
 鼻で笑うにくらしい美貌。
 ちょっ待っ。いまこのバカなんて言ったの?
「仕事……?」
「おうよ。スケジュールの関係でギリギリまで受けられるかどうか危なかったけどな」
 いぶかしさに首をかしげると、ショータローは私の眼前にびしっと企画書をつきつけた。
 それはまさに私が手にしているものと同じものだった。ひとつ違うのは、空欄だった出演者の欄に『不破尚』の名前が記載されている事で―――。
 え。
 なに。
 つまり……このCMにショータローも出る…ということ?
 それって、もしかして。
「きょうえんー!? アンタとぉーー!?」
 場所柄もわきまえず地を揺るがすかのような驚愕の叫びが自分の口から迸る。
 だってあんたアイドルでもタレントでも俳優でもないじゃない!!
「……うるせーな、CMなんだから、ミュージシャンにオファーが来ることぐらいあるっての」
 だって、だってだってだって、そもそもこのCMは敦賀さんとの共演なわけで、それだけでも緊張度メーターぶっちぎりなのに、そこにこのバカが加わったりなんかしたら…!!
 私の不純な芸能界入りの動機を知って以来、話に出るだけでも敦賀さんの大魔王降臨率があがるのに、バカ本体を前にした私の悪想念が演技にひびきでもしたら、いったいどんなことになるか…。
 まさに 前門の虎 後門の狼。前門への呪詛、後門への恐怖で、気が遠くなりそうだった。
 赤くなったり青くなったり、開いた口をさらに広げずにいられない私を尻目に、ショータローは「まぁよろしくたのまぁ」と、暢気かつ皮肉に片頬をあげた。
 その視線の先が、自分の背後に向けられているのに気付き、私は後ろから吹き付けてくる、絶対零度の風に気付いた。前にばかり気を取られて、背後に対する注意が疎かになっていたのだ。
 イヤだったけど、ものすっっっごくイヤだったけど、私はおそるおそるゆっくり後ろを振り仰いだ。
「こちらこそ、よろしく」
いっ、いつのまにそこにいらしたですかぁーーー!!
 美貌の敦賀さんは、凍っている社さんを従え、史上最凶(メガトン級)の似非紳士スマイルを爆発させていた。

***

「世界名作シリーズってことで、今回は、日本昔話形式で行こうと思うんだな」
 黒崎監督は、相変わらず自信に満ちた様子で辺りを見回すと、にやりと笑った。
 新製品は、『黒龍-Kokuryu』と『白鶴-Hakuturu』という、日本酒をベースにしたノンアルコール飲料二種とのことだった。
 日本酒はビールやワインなどと違って、アルコール分が味の構成要素として大きな割合を示すため、ノンアルコール化は不可能な分野といわれていたらしい。
 しかし、カインドーさんはプロジェクトチームを立ち上げ、酒造と提携し、長い年月をかけて特殊な技法(社外秘)を開発した。
 不屈の精神でとうとう完成させた、銘酒の風味を損なわない画期的な逸品――――。
 それが今回の新製品になるそうだ。
「つってもな、ノンアルコールは味が落ちる的な既存イメージもある。男はその辺腰が重いだろうってんで、今回初動のメインターゲットは、新しいもの好きの、幅広い年齢層の女性とする。そこで、今をときめく美形二人の出番なわけだ」
 監督は、敦賀さんとショータローを等分に眺めた。
「まずは黒龍を敦賀君に、白鶴を不破君に擬える」
 どんなふうに話が転がるか見当も付かず、(最悪な事に)両隣をはさんだ敦賀さんとショータローを盗み見ると、ふたりは無表情で配られた資料に目をおとしていた。
「コンセプトは『あなたはどちらを選びますか? あなたはどちらに選ばれますか?』だ。ほんで浦島太郎の乙姫を敦賀君、夕鶴のつうを不破君に演じて…つか、表現してもらう」
 しれっと言ってから、監督はほんの少し悪戯っぽく笑った。
 は?
 今なんか非常にナニな事を耳にしたような…。
「新製品が二つってことで、ベースとなる物語も二つ使う。二つの物語がシンクロする支点は…京子、おまえだ」
 最初の言葉を脳が理解する前にいきなりふられて、一瞬息が止まった。この監督はナニを考えて、ナニをしようとしているのか。
 夕鶴って、あの、日本昔話の夕鶴…ですよね。つうって、あの、鶴の化身の…鶴女房の。
 それで浦島太郎の乙姫って…乙姫さまですよね…。
 どう考えても両方とも、女役ですよね?
「浦島太郎の太郎兼、夕鶴のよひょうをお前がやるんだ。そうだな、名前は与太郎」
 はえ?
「なに鳩が豆鉄砲くらったような顔してやがる、いいか」
 監督は天井に向けて、ぴっと指をつきたてた。
「今回の物語は両方ともいわゆる人間と人外の存在との『異婚譚』だ。それぞれの商品イメージを模したキャラクタが、購入者の代替イメージであるおまえに、求婚という名の選択を迫る。表面上は美しい絵柄でありながら、低年齢向けにコメディ色を散りばめたCMにしたい。だが、しかし」
 色々な意味で驚愕し、あまりのことに椅子から転げ落ちそうになったけど、根性で踏みとどまった。
 わきあがる嫌な予感。

「根底に流れる繊細なエロスは前回を踏襲する!!」

 海辺の村でひとり暮らしをしていた与太郎は、ある日苛められていた亀を助ける。
 また、別の日に、罠にかかった鶴を助ける。
実は、鶴と亀は、天神と海神の化身であった。
夫々を助けたことで、夫々に求婚される与太郎。
 このふたつの求婚をパラレルで表現し、CMそのものを二本立てとする…らしい。
 がたん。
 あまりの事に遂に椅子から立ち上がってしまった。
「おっ、男役…?? 私、男役なんですか…っ??」
 瀕死の思いでつぶやくと、監督は逆転のエロティシズムだ、と余裕の笑みを浮かべた。
「というかな、厳密に言うと『男役』じゃない。今回のCMは、全体的にユニセックスな感じでまとめたいわけよ」
 いわく、敦賀蓮・不破尚の2大美形を起用するにあたって、相手役はターゲットの女性層が反発を覚えるような存在であってはならないと。
 相手役は、出来るだけ女性の自己投影が可能である事、そして、投影だけにとどまらず、相手役そのものにも『萌え要素』を織り込むこと…それが、監督の狙いとの事だった。
「CMでチョクに説明する余地はないが、与太郎は故あって男装して生活している少女、という俺の裏設定もある。あと、人外の二人は、人外だけに中性…或いは両性具有な装いで、そこはかとない色気を演出してもらいたい。まぁまだ若い不破君はともかく、美丈夫の敦賀君に女装…ってのは無茶ぶりだからな。まーそのへんは得意なスタッフをバッチリ用意しとくからよ」
 ……色々な事を、よくお考えになる………。
 へなへなと椅子に腰掛けざま、つられて敦賀さんのほうを見ると、やや苦笑をにじませながら、悠然と肩をすくめていらした。
 かえす目でショータローを見ると、余裕のふてぶてしさで生意気に足なんか組んでいる。
 私だけが、うろたえていた。
「さいしょに言った通り、最終的には『あなたはどちらを選ぶ?』という問いかけで終わるからな、結論はださなくていーぞ。世の女性たちが羨む立場だ、精々がんばって迫り倒されてくれ!!」
 世の女性達に、か、代わって頂きたい!!(切実)
 
 正直、そのあとの説明と打ち合わせは、全然頭に入ってこなかった。監督の、そんじゃ解散の一言でふとわれに返り、呆然とする。
「大丈夫? 最上さん」
 心配そうな美貌に覗き込まれて、反射的に直立不動の姿勢をとってしまった。それは思わず敬礼さえしかねない勢いだったと思う。
「は、はい……」
「てかよー、キョーコ」
 背後から間延びした声をかけられて、思わずばっと振り返った。背後に祥子さんを従え、壁際に背を持たせて、腕を組んで立つのは憎らしい幼馴染。
「おまえもタレントなら、監督やらプロデューサーの野郎共がどんな変態じみた構成もってこようとも、そんなふーにみっともなくうろたえんじゃねーよ。ヤツラは俺ら使うプロなんだからよ、…なぁ、そこのデカイ人?」
 顎で指す仕草も生意気の極みで、ぎりぎりした。
 あんた敦賀さんに向かってなんて態度よ!!
「…まぁ、そうかもしれないね」
 敦賀さんの目が少し色を失ったように見えた。なんとなく酷薄な、なんとなく物騒な。よく叱られる私でさえ、あまり見たことのないような…表情をして。
「でも、そういうことも含めて最上さんは吸収中なんじゃないかな。今から変に業界狎れするよりはいいように思うけれど」
「へえ…随分おやさしいこって」
 声の調子になにがなし胸を衝かれて、私はバカ男を振り仰いだ。知り尽くした相手から感じる違和。
「まあ…って言っても流石に…」
 悪戯っぽく見せかけてはいるが、その裏側に底知れない悪意を滲ませて、ショータローは嗤った。
 笑う、でもわらう、でもない。それは確実に嘲笑といってよい、たちの良くない声と顔で。
 長い前髪の間から敦賀さんを見つめる目には、確実に侮りが覗いていた。
「アンタが乙姫ってのは想像つかねえけどな、随分たくましい乙姫になることは請合うぜ。せいぜいお笑いにならないようにおきばりやす」
「なっ…!!」
 なんてこというのよ! このバカ! といきり立つ私の前に、すいと大きな体が立った。
「ありがとう」
 敦賀さんは一見人当たりの良さそうな笑顔を浮かべたまま、長い睫に縁取られた切れ長の目に、ショータローの嘲笑を叩き落すような物騒な色を浮かべた。
「きみの鶴女房はなかなか似合いそうだね、若いだけあって華奢だし。監督の審美眼に間違いはないと思うよ。だから…まあたしかに俺の場合は女装の似合う体型でも顔立ちでもないけれど…、監督に見込まれた演技力には期待してくれていいんじゃないかな」
 ビリビリと空気が震える険悪な雰囲気。
 な、なんで…。
 私の脳天から怒りアンテナが歓喜して飛び出す。
 にょっにょーと伸びて、二人の間に乱入しそうになるのを、頭にゆわえてひきとめた。
 もともとショータローは敦賀さんを勝手にライバル視してたから、この態度はわかるけど、普段温厚でそつのない敦賀さんまでが、直接ショータローに対してこんな真っ黒な面を見せるというのは一体どうしたことだろう。
 なんとなく、敦賀さんらしくない様子に怖気づいてしまう。
「社さん…敦賀さん何かあったんでしょうか…」
 そっとかたわらの社さんに問いかけると、彼は張り付いたような笑いを浮かべて明後日の方向を見た。
「……あー、まあ、あいつも色々あるんじゃないかなぁ…っと」
 なんのこっちゃ。

16:31  |  鶴亀  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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